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NC旋盤やマシニングセンターで農業機械の部品を作る金属機械加工製造業の会社です。
受注を受けてから個別の仕様に対応して製造する個別受注生産型の企業ですが、受注の多くは繰り返し品です。
社長からは2点、ご要望がありました。
①入社歴の浅い社員の定着と成長のための課題と解決策
②残業削減のために生産性の向上と多能工化(技術伝承)の推進
ここの従業員は入社3年以内に7~8割が退職します。
ちなみに給与は平均以上です。
なぜ若者が辞めていくのか
戦略:業務の効率化と組織力の強化により生産余力を生み出し、新規の引き合いに応える
勤続年数3年未満の技術者が4割です。
技術者は日々の製造業務に追われ、残業も常態化し若手育成ができていない。
今後、熟練技術者の高齢化が進むにつれて生産上のリスクが高まることから、この悪循環を断ち切る必要がある。


3Sと及び工場内の状況調査を行いました。
①工具類
工具箱に番号がない
工具は種類サイズが一目でわからない
工具棚の前に清掃道具が置かれており、取り出せない
まったく使われていない工具がある
治具が乱雑に放置されている
②通路
通路区画線上に完成品や作業台、パレットが置かれている
通路区画線の色が剥げている
通路に配管が通っているが、カバーや注意喚起がない
会談に工具や資材が置いてある
③資材・完成品
いつ、どこで、何に使うか、数量など情報が一切ない
ボックスに入っていて完成品の情報が外側から見えない
➃機械周り
図面が平置きで整理されていない
機械周りに工具が直置きされている
作業場付近が煩雑
資材が直置きされている
問題点:
工具類の探すムダ、取り間違え、返却間違え
通路の躓きによる転倒
資材・完成品の探すムダ、納品ミス、誤使用
図面探しのムダ、紛失
工具類や資材を踏んで転倒、蹴飛ばして紛失
3Sの視点で改善提案を行いました。
整理:必要なモノと不要なモノを分けて、不要なモノを徹底的に処分することです。
工場にあるものを工場で使うモノだけにすること。
消耗品は1か月、工具は1年、設備は2年と、モノをカテゴリ毎に分けて捨てる基準を決めて、使わない期間が基準より長ければ整理の対象とします。
赤札作戦を行い、全社員で徹底的に行ないます。
工場内はもう使わなくなった機械や治具が散在し、スペースのムダ、モノを探すムダ、移動時間のムダなどが発生していました。
必要なモノと不要なモノが混在していると、安全で快適で効率的な工場となっていません。
整頓:決まったもの(定品)を決まった場所(定位)に決まった量(定量)置く。
工具や場所に標示を行う(種類、サイズ、耐荷重など)。
ロケーションマップを作成する。
整頓の基本は「誰でも、すぐに」必要なモノを見つけられるようにすること。
誰でもが重要なポイント。
経験の浅い従業員にとって、大きいストレスの一つに、必要なモノを見つけられないというのがあります。
原因は整理整頓がされておらず標示がないこと。
つまり覚える必要がないことも覚えなければならない環境です。
しかし実際は、誤った工具を持ってくる、工具を見つけられない従業員は物覚えが悪いと評され、居心地の悪い思いをします。
更に工場の調査では、ベテランも工具のピッキングや運搬に相当のムダがあることがわかりました。
清掃:清掃は常にキレイにすること。
そして、清掃の目的は異常に早く気付くことであり、「保守点検」です。
最終的には、源流対策を行い「汚れない仕組みを作る」ことです。
マシニングセンターの窓が汚れていて、加工状況が確認できない状態でした。
調査中も機械の不具合による停止が何度も確認されました。
清掃による保守点検が行われていれば防げた不具合も多いです。
キタナイは職場では
誰も働きたくないよね
社内の確実な3Sの取り組みのために、3S推進員会を発足させます。
3S活動には、定着に3年かかると言われていますが、まずは1年ずつ着実に活動を行います。
3S委員会を中心に若手従業員も積極的に参画させ、成果が現れた活動は表彰します。
スムーズな活動のため「ブレーンストーミング4つのルール」が有効です。


運搬分析では、製品の流れや運搬の実態を正しく把握し、改善または設計を行うことを目的としています。
製品の移動のしやすさに着目する活性分析を行いました。
工場内9か所調査
台上に整理せず置く 活性示数1×1か所
パレット上に置く 活性示数2×8か所
平均活性指数 1.8
一般に平均値が2.5以下は深刻だと評価されますが、重量の問題上台車の利用が難しい製品があるのも事実です。
①台車による運搬の推進
現状ほとんどの製品はパレットに置かれており、フォークリフトによる運搬に時間と手間を要しています。
小さい工場なので、台車導入により運搬時間を削減します。
通販サイトでは、耐荷重1トン以上の台車もあります。


②運搬専用係の設置
技術者は運搬に多くの時間を取られています。
運搬専用係を設置し、全部門の資材や製品の手配、運搬を担ってもらう。
技術者は機械の稼働に意識と時間を集中するので、生産性が向上します。
会社全体の段取りを行うことになるので、各作業員の作業状況を見える化する必要があります。
技術者ごとの作業のビデオ撮影を行い、作業者工程シートを作成しました。
対象は4名。
作業者工程シートより工場の改善策を示します。
図は熟練技術者Aさんの作業者工程分析シートの一部です。




熟練技術者Aさんの問題点:
余裕時間が11%で新人の指導や観察時間。
指導時間は大事ですが、設備稼働率低下に繋がります。
改善策:
相談・指導がなくても新人が作業が進められるよう、マニュアルや動画、写真、図解などを利用して作業環境を整備。
工具や治具の保管場所、段取りの手順も整備します。
熟練技術者Bさんの問題点:
移動運搬時間が11%、検査時間が12%。
作業の動線が遠回りになっており非効率。
改善策:
作業台や工具類の整理・整頓、完成品置き場の移動などで動線を短縮する。
Cさんの問題点:
移動運搬時間が27%。
完成品を床に直置きしています。
そのため、製造後に重量物を床からメッシュコンテナに30個積み込む作業発生。
作業負担が大きく、むだな積込時間が発生しています。
改善策:
完成品用メッシュコンテナを用意。
バリ取り後はそのままメッシュコンテナに置くことで、作業負担と積込時間を軽減します。
改善前の活性示数0ですが、改善後は1になります。
Dさんの問題点:
不随作業時間(仕掛品整理含む)が14%。
仕掛品はボックスコンテナに入れられて床に直置き状態です。
しゃがまないと図面が見えないため、頻繁に立ち上がり動作が発生。
作業負担が大きく、ボックスコンテナ内の確認に時間がかかります。
改善策:
棚を設置してボックスコンテナを垂直方向に収納します。
位置を高くすることで、図面と部品を確認する時間が短縮し、立ち上がり動作を減らせます。
あわせて棚をグループ分けすることで、探す時間の削減ができます。


各作業を少しずつ見直して
全体効率化を図りましょう
連合作業分析の1つである「人ー機械作業分析(マン・マシン分析)」を行いました。
人と機械のタイムチャートを作成。
それぞれに手待ちやムダがないことを検証することで、生産性の向上に役立てます。


熟練技術者Aさんの段取り時間の割合が40%と高くなっています。
これはFさんの段取りの一部を手伝っていたため。
これによりAさんの作業割合が低下し、3名のなかで最も低い60%となっています。
Eさんの段取りの割合は16%ですが、実際は社長が手伝っているため、もっと高くなります。


3名とも総作業時間や多台持ち台数が異なるため、出来高を完成品数ではなく、延べ稼働時間とした。
「出来高÷総作業時間=単位時間の出来高」を算出し、条件を揃えたうえで生産性を比較した。
熟練技術者Aさんが1.19と3名中で最も高かった。


①多台持ちにおいて一部の機械が離れたところにあり、移動に時間がかかっていた。
1回当たりわずか10秒でも、1週間、1か月で換算すると相当な時間ロスになります。
機械の配置(レイアウト)の変更、隣り合う機会での多台持ちを行う。
②EさんFさんの段取り・脱着時間が長い。
全社的・戦略的な取り組みで段取り・脱着時間の短縮。
機械の近くに部品置き場を設置。
③2日間の分析中、故障により機械が使用できないケースがありました。
各機械にメンテナンスポイントを設置、3Sなど自主保全の徹底。
フェーズ1:隣り合う機会で多台持ち
フェーズ2:機械の近くに部品置き場を設置
移動時間の解消や段取り時間・脱着時間が短縮。
機械の稼働率の向上や時間単位あたりの出来高の向上が見込めます。
稼働率:50~57%→80~83%
単位時間当たり出来高:0.15~0.17→0.27~0.43


①「先輩社員の技術を身に付けよう会」3か月に1回
熟練技術者である部門長と、入社歴3年未満の7名で、定期的な勉強会を行う。
課題である技術伝承に加え、懇親会を合わせて開催することで暗黙知のノウハウを聞く機会を設ける。
②「治具研(究会)」3か月に1回
治具の製造を行うことで生産性向上、若手従業員の工夫・創造性を高める。
若手技術者、入社歴の浅い従業員が対象。
外部研究会やセミナーへの参加、治具製作を行う。
③「新人同志会」3か月に1回
入社歴3年未満の従業員だけで生産工程の改善を検討する。
生産工程改善に向き合うことで、新たな発想により業務の効率化につなげることを目的とする。
幹部社員への提案、幹部社員がアイデアを汲み取る仕組みも併せて導入。
自分の意見が汲み取られることは、モチベーション向上の機会につながります。
戦略:業務の効率化と組織力の強化により生産余力を生み出し、新規の引き合いに応える
この戦略のために、
工場の3Sで、仕事に集中できる環境にする。
作業はデータを取って、効率化を図る。
若手が活躍できる職場にする。